野暮用でヤマト運輸の営業所へ行った。

入ると何だか賑やかな店内。
女性のスタッフ同士が何やらワイワイやっている。
パッと見、20代と30代の2人といったところだろうか。

20代スタッフ「えー何で私ヒンニューなんて言っちゃったんだろう…!」
30代スタッフ「いつもそういうこと考えてるんじゃないのぉ?」

否が応にもシナプスを揺さぶってくる会話。
※重要な部分はあえてカタカナで書いたので、漢字変換は脳内でどうぞ。

しかし、店内は自分を含めて4~5名のお客。
その環境下でやり合う雑談としては、いささかアヴァンギャルドだ。
まさか我々が見えていないのか?
それとも、ストレスフルな日々の中でお客の存在などどうでもよくなってしまったのか…?

伝票を発行している間に聞き耳を立ててみると、どうやらお客に「品名」を書いてほしいと伝えようとしたところ言い間違えるという事故が起こっていたようだ。
「そりゃさぞ恥ずかしかろう~。さぁどんな顔しているか見てみようか?」という気持ちをダウンジャケットの胸ポケットにしまって、私はうつむき気味に列の最後尾に並んだ。

スタッフさんは、まだ自分がやってしまった言い間違いを恥じ続け、
20代スタッフ「やぁだ、品名って言おうとしたのになぁーんでヒンニューとか言ってんだろぉ!」と大声でキャピっている。

ハズいのは分かるがそれを言うことで、私も含めて「事故った瞬間には店内にいなかったお客」に続々と発表することになるぞ…と危惧しながらも、引き続き順番を待った。

幸か不幸か(?)もらい事故による直接の被害者になったのは、御年70~80代くらいの好々爺。
受付スタッフといえど、3倍も4倍も年下の女子からの予期せぬ追突にお困りかと思いきや、さすが人生の先輩は切り返しがスマートだった。

爺「おぉーそうだよ、僕ヒンニョーだよ。よく分かったねぇ。」

※重要な部分はあえてカタカナで書いたので、漢字変換は脳内でどうぞ。

20代スタッフ「え…?あ…。いやーホントスイヤセーン!いやーマジハズいっすわー」

心無しかその声はさっきの恥じらいより大きく聞こえた。
まるで、かき消したい記憶が2つになったかのような…。

言い間違いと聞き間違いと恥じらいと気遣いにより、とんだ玉突き事故を見てしまった夕暮れ時であった。